建築・土木・設備製品・工法 総合カタログdbNET

〒101-0061 東京都千代田区三崎町3-2-10 寺西ビル4階

VOL.37-家内の役者たち・壁紙(2)

J・H のささやき VOL.36 『家内の役者たち・壁紙(2)』
                   
こんにちは、ジェームス・ホントです。

ウィリアム・モリスは1834年に、ロンドンの近郊で生まれました。
家庭は裕福で、父親は証券の仲買人でした。
当時としては、中流階級の『上』に属すると言えます。
7歳の時には騎士道で有名なウォルター・スコットの小説を読んでいたというから、
早熟だったようです。

19歳で聖職者を目指してオックスフォード大学に進みますが、この学生時代に、
芸術と出会います。
大陸のベルギー、フランスを訪ねて、ゴシック建築に魅了されてしまいます。
建築の魅力をモリスに教えたのは、美術評論家ジョン・ラスキンの『ヴェニスの石』
という著書でした。
ラスキンの主張は、『中世は職人たちが手作りでゴシック建築を作りあげた時代だ
った。
産業革命以降、工場労働者は機械の奴隷となって、非人間的な存在になってしまった。
それにくらべれば、ゴシック建築を作っていた職人ははるかに自由で、労働に喜びを
感じていたはずだ』というものでした。
 
この本に触発されたモリスは、生涯、『労働は楽しくなければならない』という思い
を抱くようになります。
 
大学を卒業後、モリスは、聖職者への道を絶って、芸術の道へ進むことを決心、建築
家になるべく、建築事務所で徒弟として修業をはじめます。
その間、画家のロセッティとの交流がはじまります。
 
その後、ロセッティの進言もあってモリスは絵を描くことに開眼し、壁画の仕事を請
け負うようになり、やがて、美貌のジェイン・バーデン(18歳)と出会います。
モリスが描いたジェインの絵が何枚か残っていますが、とにかく『濃い顔』です。
ジェインにはロマ人(当時はジプシーと呼ばれていましたが、この言葉の由来は、彼
らがエジプトから来たと思われていたからです)の血が入っていたと言われています。

        『レッド・ハウス』
  
ふたりはやがて結婚し、レッドハウスと呼ばれることになる家を建てます。
この家は、友人の建築家フィリップ・ウェブが設計した、赤煉瓦をふんだんに使った
家でした。現存していますが、内部の装飾は息を呑むほど美しく、家具、タペストリ
ー、壁紙などすべてモリスの手によるもので、見るものをウットリとさせます。
このレッドハウスで、モリスは友人たちと芸術論議に花を咲かせます。
 
やがて、モリスはインテリアの会社を友人と興し、社会に打って出ます。
壁紙、タペストリー、ステンドグラス、家具、本の装丁などなど、なんでも作ります。
いずれも好評を博し、多忙な日々がはじまります。
一方、友人のロセッティが、妻のジェインに恋心を抱いていることに気づいたモリス
は、ロセッティにジェインを進呈します。妻のジェインもロセッティを憎からず思っ
ていたので、奇妙な三角関係は3年ほど続きました。
モリスが何を考えていたのか、それは謎です。
(なんてやつだ、まったく!)
 
       『社会主義者を宣言』
 
一方、モリスは、『富める者も貧しい者も、誰もが等しく美しいものを手にするため
には、社会が変わらなければ駄目だ』との思いに至り、社会主義思想に傾倒、イギリ
スを批判する政治的発言をはじめ、雑誌に『ユートピアだより』を連載します。
ユートピア(理想郷・理想のコモンウェルス)というのは、ご存知の方も多いと思い
ますが、トーマス・モアが1516年に書いた、イギリス国家を痛烈に批判した書名
です。
 
理想主義者のモリスは社会主義運動の中で様々な軋轢、葛藤、絶望を味わったようで
すが、常に希望を失いませんでした。
社会主義運動のかたわら、『古建築物保存協会』なるものも創設しています。
 
モリスは、『芸術社会主義者』であったのかも知れません。
モリスの理想とする最高の価値は『美』であり、モリスが画くユートピアは、労働の
喜び、創造の喜び、生きる喜びが花開く社会でした。
それは『美しい社会』です。
1896年、モリスは62歳で亡くなりました。
走りっぱなしの、せわしい人生でした。

1900年、パリで開催された万博の、イギリスのパヴィリオンの内装はすべてモリ
ス商会が請け負いました。
 
最後に、モリスの遺した印象深い言葉を記しておきましょう。
『最も重要な芸術作品は家だ。次が本だ』
モリスにとって、本も『建築』の概念に入っていたようです。

《参考図書》1997年6月号 芸術新潮 特集 ウィリアム・モリスの装飾人生
      イギリス人の国家観・自由観 丸善ライブラリー 名古忠行著

次回は『洗面台』です。
洗面台で推奨システムがお有りでしたら、本メルマガでご紹介します。
情報をお待ちしております。