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VOL.64 材木考・檜(1)

J・H のささやき VOL.64 『材木考・檜(1)』
こんにちは、ジェームス・ホントです。
 檜。檜舞台。歌舞伎や能でつかわれる言葉です。
 一世一代の檜舞台。ノーベル賞の式典とか文化勲章の授与式に臨んだひとの脳裏には、
 きっと、そんな言葉が思い浮かぶことでしょう。
 日本人にとって、檜は、それほどに、重く、大きく、栄光に等しい意味を持っています。
 さて、この檜、日本原産です。 
 ヒノキはヒバとも呼ばれ、さらに似た種にアスナロがあり、さらにさらにヒノキアスナ
 ロまであって、植物の科、属の分類はややこしい。
 井上靖が『あすなろ物語』という小説を書いていますが、アスナロの語源は、明日には
 檜になろう、ということらしいが、ホントの所は不明です。
 
 語源としては、『火の木』が有力です。
 あの『養生訓』で有名な貝原益軒は『大和本草』で、『これを錐にてもめば火を生ず、
 ゆえに火の木という』と記しています。
 語源というのは厄介なもので、いかんせん遠い昔のことなので、諸説有り、としか言
 いようがない。
 端折ると、そのほか、善き木、日の木、という説があります。
 能の演目に『檜垣』があり、個人名にも檜垣はあります。
 黒澤明監督の『姿三四郎』に、敵役で檜垣某がいたと思うのですが記憶があいまいです。 
 そうそう、阪神に檜山選手がいましたね。左の強打者でした。
            『グラント将軍が植えたヒノキ』
 台湾にはタイワンヒノキ、アメリカにはローソン(人名か地域名か不明)・ヒノキがあ
 ります。
 ローソン・ヒノキは明治12年に、アメリカのグラント将軍が来日した時、記念樹とし
 て上野公園に植えられました。
 
 グラント将軍は南北戦争(1861~1865・アメリカでは内戦と言われていますが、
 なぜか日本では、南北戦争と呼ばれます)の北軍の英雄で、大統領にもなったことは、
 皆さん、ご存じですね。大変な親日家だったんですよ。日本にはかなりの長逗留をして
 います。(京都を訪れた時の、芸妓さんとのツーショットの写真が残っています)
 南北戦争直後のアメリカは混沌、騒乱の時代で、問題は山積、就任中のグラント大統領
 はとても不運なひとでした。
 政界引退後、喉頭ガンに苦しめられながら、屈することなく偉大なる『南北戦争回顧録』
 を書き終え、その4日後に亡くなっています。
            『檜風呂は省エネに不向き』
 さて、本道に戻って、檜の名産地と言えば、まず木曾、木曾檜が屈指ですね。
 檜の風呂、これは日本人にとっては極楽で、あの匂い、香りがなんとも言えず快い。
 ゆったりと手足を伸ばして、眼を閉じて空想に耽るひとときは値千金。
 しかし、10月20日に東京で行われた『地域創生 創エネルギーとエコ街づくり』の
 講演中、講師をされた国交省の三浦尚志氏は、『檜の風呂は、省エネ・熱効率の観点か
 らおすすめできない』とおっしゃっていました。
 読者諸兄の中で、檜風呂をご利用の方は即刻……痛し痒しですね。
 檜はご承知のように、古代においては朝廷、その関係部署、つまり官にかかわりのある官
 庁、宮廷、神社、寺で大量に使用されていました。建築資材だけでなく、木工品にも使用
 され、さらに仏像彫刻の材料としても用いられていました。
 面白いところでは、長良川の鵜飼で、鵜匠が鵜をあやつるために手にしているあの綱は、
 檜を紙より薄く削ったものでヒノキ縄なんですって!
 水切れがよく、鵜になんらかの危険がおよびそうになると、簡単にねじ切ることができ
 るからです。
 そして檜の皮は、檜皮、ヒワダ葺きと言って、屋根材にもなります。
 実に用途の広い、本当にありがたい木なんですね。
        参考図書 『日本の樹木』 辻井達一著  中公新書
             『檜』 ものと人間の文化史 有岡利幸著 法政大学出版局
      
  次回は『檜 2』です。