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Vol.69 材木考 杉(1)

  5.J・H のささやき VOL.69 『材木考 杉(1)』

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こんにちは、ジェームス・ホントです。

杉。日本人に最もなじみのある木です。檜はちょっと、その高級感から、別格とい
う感じがしますが、杉は、松とともに、日本人なら誰でも、どこかで目にしていま
す。
また秋田杉、吉野杉、北山杉、屋久杉という名称も、たいがいのひとが、どこかで
耳にしているはずです。

それだけに、人名にも相当使われています。
大杉、中杉(これは、あまり聞きませんが)、小杉、杉田、杉下、杉内、杉村、杉
野、杉山、などなど枚挙にいとまがありません。
60歳以上の野球ファンなら、南海ホークスの、アンダースローの杉浦投手を思い
浮かべるのでは。
立教大学では長嶋選手と同期で、プロでは確か、年間に42勝を記録したことがあ
ります。(間違っていたらご容赦を。そんなに勝ったのは皆川だったかしら?)
現在では考えられませんね。

また歌謡曲には、春日八郎(この方とは、東北新幹線で隣り合ったことがあります)
の絶唱、『別れの一本杉』があります。
杉は、驚くなかれ、『古事記』、『日本書記』、『万葉集』にも登場しています。
また多くのひとが、俳句、和歌で、杉を歌っています。
夏目漱石は、『秋の空 浅黄に澄めり 杉に斧』という俳句をものしています。

現在では、杉花粉、ということで、少し毛嫌いされていますが、杉ほど、日本人の
生活に密着した樹木はありません。
建築材のみならず、土木材、食器類、また船にも使用されています。
最優良材の檜にはおよばないが、ゆるぎない地位を築いてきました。

杉の良いところは、割裂性、つまり、縦によく割れる性質にあります。
そのため板材として最適で、板は壁や戸、仕切りなどに使われ、さらに、箱などの
容器にも転用されます。割り箸もそうです。

江戸期の260有余年の間、地方の各大名は、領民の自由な杉木立の伐採を制限する
とともに、杉材を許可なく藩外に持ち出すことを禁止していました。
一方では、領民に、杉の造林を奨励し、杉材の生産を図っていました。

戦後、たくさんの杉が植林され、山地に生息する樹木では杉の比率が最も高い。
戦後の都市部は慢性的な住宅不足で、住宅建築に必要な木材に対して飢餓状態に陥っ
ていました。そこで、比較的短い期間で成育する杉が、どんどん植林され、どんどん
伐採され、今日に至っています。
その余波として、『杉花粉』が蔓延したわけですが、杉に責任はもとよりない。
杉に言わせれば、さんざん、おれたちを利用しておいて、いまさらなんだ、悪者扱い
しやがって、という心境ではないでしょうか。
今後、三回にわたって、杉について語ってまいります。
乞うご期待。
      参考図書 『ものと人間の文化史』 有岡利幸著 法政大学出版局